【たこのKAN劇速報!!】12
二兎社「新・明暗」
漱石の絶筆を趣向凝らし面白くアレンジ
永井愛さんが、またまたやって下さいました!
二兎社の新作「新・明暗」は、夏目漱石の絶筆となった「明暗」を永井さんが現代劇にアレンジしたもの。
たこも観劇に備え「明暗」を読んでみた(3分の2ほどしか読めませんでした)んですが、かなり原作に忠実です。漱石の書いたセリフそのまんま・・・?という部分も結構ありました。けれど、原作は心理描写もセリフも、ネチネチと長ったらしいんですが、永井さんはそれを上手く短くテンポ良く見せています。
他人と表面上うまく合わせようとする心、どうにか優位に立ってやろうという心、そして他人が自分を本当はどう思っているのか気になって仕方がない心・・・。ほとんど自分の損得ばかり考え、それに振り回されている登場人物たち。
原作を読む限りでは、これをどうやってコメディーにするのか全く想像がつきませんでした。が、さすが永井さん、逆に「こういう人たちこそコメディーになる!」と思ったんでしょうね。
ただ、全体的にセリフが理屈っぽくてやや難解なせいか、笑いどころはちょっと少なめだったような。
今回は、行動と心の内の違いの描写、時間や場所の自在な入れ替え、役者が何役もやったりと、ここ数年の二兎社の演出とは違った趣向。今まで各戯曲賞を総ナメにしてきた劇作家として注目されてきましたが、今回は永井さんの演出の手腕を見せつけられた気がします。
迷路を思わせるような抽象的なセットが、いろんな使い方が出来るように良く考えられていて、この芝居をさらに面白くしていました。
後半、津田が元恋人に会いに温泉に行った後の、漱石の絶筆に永井さんが付け足した部分、すごく面白かったです。これがまた、展開が二転、三転し、演出の上手さと役者さん達の熱演も手伝って、たこは舞台に釘付け状態に。もうラストは全く想像付かなくなってしまったんですが、最後の最後にまたいじわる(?)な仕掛けが待っていて、心憎いラスト。
役者さんも、いつもながら達者な方ばかり。佐々木蔵之介さん演じる津田は、他人と争ったりすることを極力避けているようなところがあるのですが、時折見せる険しかったりふてぶてしかったりする表情が、津田の本心を非常に上手く表していると思いました。
津田の妻の延子と元恋人の清子の二役を演じている山本郁子さん、正反対な性格の役を見事に演じていました。山本さんは足に怪我をされて一日だけとはいえ公演中止になったほどですから、まだ完治していないのでしょう。ちょっと片足を引きずっているように見えるところもありましたが、そんなハンデをはね返すほどの好演でした。
そして、津田からも延子からも煙たがられる存在で社会主義者の小林役の下総源太朗さん、とっても良かったです! この芝居の主な人物の中で唯一、思っていることを腹に溜めないで全て吐き出してしまうタイプ。自分勝手で非常識、でも素直で、議論好きの屁理屈屋で、他人に媚びずあけっぴろげな性格。下総さんの演じるパワフルで野性的な小林の存在が、この舞台で異彩を放っていました。
文豪・漱石の未完の傑作を現代劇のしかも喜劇にし、その続きまで書き(しかも面白い)、アイディアを駆使した演出でその才能をまざまざと見せつけた永井愛さん。
本当に永井さんには、恐れ入ります・・・。
三軒茶屋・シアタートラムで10月24日(木)まで。11月5日(火)、かめありリリオホール。その他、盛岡、仙台、石川、岐阜、熊本、福岡でも地方公演有り。
当サイトの「10月のオススメ舞台」でも紹介しております。
問い合わせ先 二兎社 TEL 03-5638-4587
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