極限状態での「生きる」決意に号泣!
これまでの価値観をも揺るがす舞台

<特集>vol.6 10×50kingdom
「デビルマン 不動を待ちながら」

原作/永井豪
脚本・演出/じんのひろあき
出演/坪井一広 塚本拓弥 尾乃塚隆 鷲足満 藤平涼二 金礪賢爾 井上カオリ 瀬戸山美咲 磯崎いなほ 桜弥里 中村愛美 他
   2002年9月13日〜16日/新宿・シアターサンモール


 作・演出のじんのさんが主宰していたマントルプリンシアターで91年に初演、以来改訂上演を重ね今回が四演目(今年3月に上演された2002年バージョンの再演)。初演時から観たいと思いつつも、今回初めて観たたこはビックリ! なんてスゴイ芝居なんでしょう!! 価値観をひっくり返され、もう最後の方は号泣状態だったのでした。 




   左から坪井一広、金礪賢爾、磯崎いなほ、
永井正子、井上カオリ      


 
 ●オモシロ関連BOX●
既存の劇団とは違う「王国」
10×50kingdomを旗揚げ!
 脚本・演出のじんのひろあきさんは、舞台の作・演出の他に、映画「櫻の園」などの脚本家、映画監督、人形作家としても活躍の実に多才なお方。
 今回の「デビルマン 不動を待ちながら」は、そんなじんのさん主宰の、10×50kingdom(http://www.10x50kingdom.com/)の旗揚げ公演となる。
 ちなみに、この10×50kingdomという名前には、10年間で50人の素晴らしい役者と出会い、既存の「劇団」という概念にとらわれない「王国」という集団を作ろうというような意味があるそう。「劇団員」ではなく、10x50KINGDOMの企画に賛同した「王国の住人」が自由な形で参加する「劇団」と「ユニット」の中間的な集団。
 10x50KINGDOMのメンバーが参加している、じんのさん作・演出の「連作短編2人芝居 メトロポリスプロジェクト」は、300本の2人芝居を上演して一つの街を出現させようという、壮大な試みのプロジェクト。2003年1月〜2月に新作3本を連続上演予定。

   原作の設定を借り自由奔放に脚色

 永井豪さんのマンガ「デビルマン」のわずか15ページ分を、じんのひろあきさんが2時間の舞台に脚色。しかもサブタイトル「不動を待ちながら」でお分かりの通り、ベケットの有名な不条理劇「ゴドーを待ちながら」も下敷きに。
 この芝居を観るに当たり急遽マンガ「デビルマン」を読んだ(といっても、観る前には文庫版で2巻までしか読めませんでした)んですけど、このマンガすごく面白いですねえ。しかし、後半の展開はスゴイ。すさまじく、容赦無い。人間の自滅への道を描ききっちゃってる。読んだ人たちから「テレビアニメとは全然違ってスゴイ話」とは聞いてましたが、本当に凄いマンガですね。
 で、芝居なんですが、これまたスゴイ!
 もちろん、原作あっての舞台ですから、スゴイのは当たり前といえば当たり前かもしれません。しかし、設定はマンガ「デビルマン」の世界ですが、15ページ(芝居にすればおそらくたった数分)を2時間に引き伸ばしてる上に、マンガと同じ登場人物は不動明(デビルマン)の恋人の牧村美樹ちゃんだけ。あとの人はマンガには全然出てきません。不動明の帰りを待って、牧村家で籠城しているという設定を借りて、じんのさんが自由奔放に脚色しちゃってます。
 登場人物は15人。美樹ちゃん以外の人は、なんでここにいるのか、牧村家あるいは不動明とどういう関係なのか、最初は全然分かりません。で、観客は、それを探りつつこの舞台を観ることになります。
 各テレビ局は「悪魔の巣窟、籠城する悪魔たち」と題して牧村家を中継し、家の周りには牧村家の人間が悪魔だと思いこんでいる近隣の人だかりが。政府による悪魔狩りの連中も近くで待機。そんな連中がいつ攻め込んで来るか分からないという極限状況のもと、籠城している人たちのさまざまな葛藤や日常が描かれます。

   現代社会への批判をさりげなく

 テレビに映っている牧村家と、自分たちが今いる牧村家が同じものだという実感が沸かないという大学生たち。ただ、「すごく良くできてる」としか。これって、アメリカのテロ事件を意識したセリフなんでしょうか。確かにテレビや映画でさんざんフィクションを見せられている私たちは、テレビで映っているものが本当のものだという実感が沸かなかったりしますね。だからあのアメリカの同時多発テロの、飛行機が突っ込んで世界貿易センターが崩れ落ちる映像を見て、まず「映画みたい!」と思った人も多いことでしょう。逆に、テレビの情報が実はでっち上げなのに本当だと思いこんでしまう危険もありますよね。この舞台には、そんなマスメディア批判がさりげなく織り込まれてました。他にも教育批判とか群衆心理とかいろいろ考えさせられる部分が沢山ありました。現代社会を生きるには、何が真実なのかを見極める目が必要なんですね。
 

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